平和祈念作品集
「これ、なんのじけんなの?」

 のぽがアリサにそう聞きました。

「う〜んとね、外国にあるテロ組織が、飛行機をハイジャックして、このビルや、アメリカの防衛省に当たる所に突っ込んだんだって」

 アリサは、ニュースで知ったこの事件のことを、のぽに話しました。

「学校でも、この話で持ちきりだったんだよ。でも、みんなは次の日の朝ニュースで見たって。中継映像見てたのは、わたしだけだったみたい」

「こどもはねてるじかんだもんね」

「…のぽだって、子どものくせに」

「のぽはのぽだもん」

 この話を聞いても、のぽはのんきにテレビを見ています。

「大変だったんだよ。飛行機に乗ってた人はもちろん、ビルで働いてた人も、それを助けようとした人たちも、たくさん死んじゃったんだから!」

 のんきなのぽを見て、アリサは声を張り上げました。

「ぴ!?」

 のぽは、思わず飛び上がりました。

「そんなにひどかったの!?」

「うん、そんなにひどかったの。だから、今でも、こうやって、ニュースでやるんだよ。あの悲劇を忘れないようにするためにね」

「そうなの…」

 のぽは、その話を聞いて、しょんぼりしてしまいました。

「なんで、こんなことするのかな。のぽ、わかんない」

 アリサは、のぽの言葉を聞いて、考え込んでしまいました。

「う〜ん、そうだね〜、…人が憎みあってるから、なのかな」

「にくむ?」

「考え方や習慣が違うっていうだけで、相手を嫌うってことだね」

「ちゃんと、あいてのこと、わかってあげればいいのに」

「なかなか難しいんだよ。特に、思想や宗教がからんでくると」

「ぷ?そうなの?」

「わたしにもよくわかんないけど、そういう人たちもいるってこと」

 のぽは、首をかしげて、

「やっぱり、のぽ、わかんない」

と言いました。

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