平和祈念作品集
 シライアスとルーイが星都に着いた時には、既に戦いが始まっていた。

 星の民同士が戦い、血を流している。

「これは…」

 ルーイには、目の前の光景が信じられなかった。

 パドゥー星は、「正義感が強い者」が集まる星ではあったが、いかなる理由があったとしても、星の民同士が戦うことはなかったからだ。

「これが…サバミラ星のやり方だ」

 シライアスは、冷ややかな口調で、そう言った。

「しかし、サバミラ星の者が来ないように、星都にはバリアが張ってあるのでは…」

「さっきの黒サソリを見ただろう、ルーイ。サバミラ星の者は、ヒトだけではなく、他の生き物にも寄生することができる。もし、虫や獣に寄生した場合、今のバリアでは防ぐことは不可能だ」

 シライアスがそう言っている間にも、仲間が目の前で倒されていく。

「そんな…」

 ルーイは、ショックを隠すことができなかった。


「シライアス殿!」

 杖をついた老人が、2人の下へやってきた。

「長老!ご無事でしたか!」

 ルーイが老人―長老ターレスに声をかけると、ターレスは小さく頷いた。

「ルーイ、おぬしも成長したな」

 どうやら、千里眼で、先ほどの戦いを見ていたようだ。ルーイは、褒められて、少し嬉しくなった。

「じゃが、今は、感心している場合ではない。この事態を解決しなければ、この星は、サバミラ星の者に支配されてしまうのじゃ!」

 シライアスは、頷いた。

「私も、そう思っていたところです。表面上は何もないように装っていたサバミラ星が、このところ、不振な動きをしていたのが気になって」

「ふむ、儂もそうじゃ。しかしながら、まさか、あの者たちが、ヒトではないものに寄生するとは、思いもよらなんだ」

 ターレスは、そう言って、白く長い顎鬚に触れた。

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