新!狼×天然【番外編】
「何でそんなに心配すんだよ?」
彼女は『え?』ってとぼけた。
彼女にとって俺は、しつこかった先輩を諦めさせるための仮の彼氏になってもらっただけ。
好きでもないし、付き合いたいとも思ってなかっただろうし、仮の彼氏を俺に頼んだ理由は、
ただ単に、俺が“来るもの拒まず、去るもの追わず”の女たらしだったから。
こんなボッコボコにされて、血だらけでケガした俺に、何でこんなに心配してくんのか分からない。
もしかしたら、こうやってグループのやつに呼び出されて、最終的にはこうなることが彼女には分かってたのかもしれないのに。
今からトップのやつが来て、俺をもっとボッコボコにしに来るかもしれないのに。
彼女は俺のそばに来て、自分が持ってたハンカチで俺の切れた唇に、そっと触れた。
逃げればいいのに。
俺なんか置いていけばいいのに。
『協力してくれてありがと』って言って、この場から逃げればいいのに。
………彼女はその場から、一歩も動こうとはしなかった。
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