飛べない天使の子


「香山くん顔どうかしたの?」


王子はまだくつくつ笑いながら、疑問を口にする。


「……佳子にやられた。王子が昼休み奪うから」


頭の上に?を浮かべて王子は謝る。
分からないのに謝るなんて素晴らしい。

王子の特殊な体質の話は昼休みをほぼ全部使った上、王子のことで頭いっぱいになった私達はパンをすっかり忘れた。
お怒りの桂子はまず至に一発、ミラクルパンチ。
私の替わりにまた至が佳子のスーパーハリテを受ける。

別に私が庇ってほしいと言ったわけではなく、佳子が2発見舞わせたのだ。


「王子~沙久がクレープ奢れって」

「そんな図々しいこと王子に言ってない」

「俺に言ったのは認めるのか」

「いいよ。夫婦漫才見れたし」

「さっすが王子太っ腹~! ただの変態とは大違い」

「香山くん達って付き合ってるの?」

「いやーん。王子やきもち? 照れる~」

「お前のその頭どうにかしてから王子に色目使え」

「…違うんだね」


バチッと小気味よい音がして視界が真っ暗になった。
顔面叩かれると鼻が一番被害デカいんだね。

一人フンフン納得していると、大変なことを思い出した。


「至今日何曜日?」

「あ? 月曜……王子クレープ食べれなくなった」


私達が大好きなクレープ屋は気まぐれ経営だから、休みが分からないけど月曜は絶対休み。
美味しいんだけどな―。
クレープ食べたかったのになー。

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