飛べない天使の子
とりあえず、
「王子私んちで勉強会しない?」
「なっ…お前!」
「至だって王子に教えてもらえた方がいいでしょ?」
「王子の前じゃエロい話出来ないだろ」
「誤解を招く言い方するな!」
まるで私達がいつもそんな話しているみたいじゃん。
王子に勘違いされたらどうすんのよ、プンプン。
「……香山くんに悪いから遠慮するよ」
「王子! 他人はどうだっていいんだよ? 私は王子自身の意見を聞きたい」
でも、至の意見を尊重する人って珍しいな。至、良かったね。
うーわーでもっ、王子自身が行きたくないって思ってるんならダメージでかいわ。
間違った! 色々間違ったよ自分!
……あれ?
予想に反して王子は嫌そうな顔はしてなくて、ほんのり赤くなって頷いた。
「行きたい、な」
反則だぁぁあ!!
んな、綺麗な顔で照れるなんて、私を萌え死にさせる気かぁぁあ!!
可愛いすぎだぜ、恋する乙女王子!!
ん? 恋するって誰にって? そんなの聞かないでよっ!
「…王子ってさ、家こっちなのか?」
「オォ! すっかり忘れてた。逆方向なら無理しなくていいからね」
「……大丈夫だよ」
この時王子の微妙な変化に気づくことが出来なかった。
寂しげに笑う、自嘲気味なそれは明らかに昼休みとは違ったのに……。