飛べない天使の子




「そこら辺座ってて。麦茶持ってくるね」


私の部屋は個性的らしい。
色は黄色やピンクが多くて、大抵は蛍光。目がチカチカすると文紀に嫌がられた。
そこら中には様々な種類の人形。
「だけど散らかってはいないんだよなー」と佳子に不思議がられる。
唯一、至は気に入っているらしい。有り難いことだ。

麦茶を持って戻ると、くつろぐ至と反対に、王子がさっきの場所で突っ立っている。


「王子どうした? 落ち着かない?」

「なんというか……個性的な部屋だね」

「よく言われる。…嫌?」

「そういうわけじゃ…」

「新巻読んでい?」

「購読料」

「しょーがねーな。勉強教えてやるから」


それ、どっちのセリフだっ! とツッコミをしたら、真剣白刃取りを決められた。
くそーっいつも決められん!


「精進しないな」

「誰かさんの頭もな! …って至はどうでもいいの! 王子もしかしてふーちゃんに座るの可哀想と思ってる!?」


私の部屋には買った順にあーちゃんからむーちゃんまで名前を付けられた人形がいる。
ふーちゃんは猫型クッション。私はたまにふーちゃんをお尻の下敷きにすると罪悪感に苛(さいな)まれる。
でも、ふーちゃんだって王子のお尻なら嬉しいと思う。


「ふー…ちゃん?」

「その猫型クッションの名前だよ」

「こいつ、そこら辺の人形に名前付けてんだ。痛いだろ?」

「はっ。至が彼女彼女、言ってるよりはマシだよ」


鼻で笑うと、鼻で笑い返された。
この際、至は漫画を読ませて、王子だけ見よう。


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