飛べない天使の子


「……そっか。可愛いね」

「ふーちゃんは部屋の中でも1位2位を争うくらい美人さんですから」

「や、じゃなくて百地さんが」

「へ?」

「名前付けるなんて女の子らしいな、って」

「……ぁあ! 王子! 貴方はどうして王子なの?」

「え?」

「ロミジュリか!」

「バッハか!」

「……」

「…ロミオとジュリエットは、」

「知ってる、シェークスピアでしょ? ちょっと至! ボケたんだから返してよ!」

「バッハはマイナーなんだよ。どうせならベートーベンとかにしろよ」

「ベートーベンの曲知ってる?」


黙り込む至。ナイスツッコミだったんだけどなー…。
至に出会った当初はどう話していいか分からなくて、文紀はひたすら佳子にアタックだし、私達は無言だった。
声を振り絞って(若干フィクション)ボケると、ツッコミボケをして返してくれた。
ボケツッコミではなく、ツッコミボケ。
そんな貴重な芸風を得た私達は晴れて相方になりました。
だから、実を言うと、至に彼女が出来たら寂しいなと思うわけ。
口が裂けても言わないけど。

ってか、今は王子!
あんな台詞を素面(しらふ)で言えるなんて、恐るべし…!


「あの…百地さん? 顔怖いけど…?」

「おっとスイマセン!」


私素直だからすぐ顔に出ちゃうんだよね~。


「口にも出てる」

「なに!? いっいつから?」

「たまに。なっ王子?」

「うん」

「ぎゃあー! じゃなくて、王子とりあえずふーちゃんの上じゃなくていいから、座って。本題に入りましょう」


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