飛べない天使の子
「もしかしてアネキの彼氏!?」
「王子これ私の弟。至ラブのちょっと危ない子。話さない方が身のためだよ」
「どーもアネキの彼氏さん!」
「ちげーよ!」
「彼氏のわけないじゃん」
私と至の声が被る。
「どこをどう見ればこぉんなイケメンと私が付き合えるの?」
「あ……そうだな。悪ぃ」
そうあからさまに納得されるとそれはそれでムカつくな。
至は苦しそうに咳して、王子は目を丸くしたまま固まっていて、唯一種樹だけがケラケラ笑っている。
空気を読めKY!
「あら、イケメン!」
「母さん!?」
「ママ!」
「そんな喜ばないでよ子ども達」
「「や、違うから」」
「ちわっす」
「至くんお久しぶりね! 相変わらず可愛いわぁ! で、そのスベスベの肌のモデル並みに美しい彼はどなたかしら? 沙久の彼氏?」
「違うから! も~種樹もママもそんなに私に彼氏作らせたいの!」
だって、ね~とか言いながら種樹とママは顔を見合わす。
えーえーわかっていますとも! そりゃ一度も彼氏いたことないけどさ、モテないんだからしょうがないじゃん! てか、私の彼氏とか王子に失礼だよ!
「触っていいかしら?」
独白の間にママが王子に近寄っていたので、慌てて間に割り込む。
自分のママながら危険だ……。
「ママも種樹も王子に害をなすなら出てけ!」
「あらっ本気なのね! 種樹! 至くん持って出るわよ!」
「あいあいさー」
「はっ!?」
若干一名可哀想な奴が見えなくもなかったが、これで一件落着。よかったよかった。
ため息と共に額を腕で拭って、まだ固まったままの王子に声をかけた。