飛べない天使の子


「王子ごめん! だいじょーぶ?」

「……え? あっうん……へい、き」

「ママと種樹がごめんね」

「……明るい家族だね」

「よく言われるー」


へらっと笑ってみせる。
ママ達を誉められるのは嬉しい。でもそれだけってわけではない。


「よく似てるね百地さんち」

「それもよく言われるけど、実は私血繋がってないんだ」


なるべく明るく軽く言ったつもりだったのに、王子はあからさまに気まずい顔をして今にも謝りそうだ。
やだな、そんな風に謝られたら泣いちゃうかも……なーんて。


「……ごめん」


ほら、みんなそう言う。
別に悪いことしたのはそっちじゃないのに、そんな悲しい顔しないでよ。私は大丈夫! 慣れているんだから。


「謝らないでよ。私この家の家族になれて幸せなんだから!」

「そう……なんだ」


物心ついた後にこの家に来たから両親の顔は覚えている。でもうろ覚え……ってママ達には言っているけど、本当は鮮明に残っているんだ。
背が低いお父さんともっと低いママそっくりのお母さん。二人とも今の王子と同じ顔していた。ごめんねって何度も言いながら眉を下げて、お母さんは涙を浮かべて、お父さんは私の頭をポンッと叩いて笑みを浮かべて……。
本当は全部覚えてる。愛されていたってことも幸せだったことも。だから二人を憎めない。だけど今百地家で幸せなのも嘘じゃないんだ。

しばらく私も王子も声を発しなかった。


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