飛べない天使の子




靴を履く王子の背中を見ていて、うっかり抱きしめそうになった私はママの娘だと思う。


「王子ごめん」

「え?」

「来た時より顔やつれてるよ。疲れたよね」


抱きつきたいと思ったことは秘密にしとこう。


「……疲れたと言えば疲れたけど、いい疲れだよ。またお邪魔してもいいかな?」


ははは犯罪だ!! その笑顔は犯罪級の輝かしさだっ!!


「いっいいけど!! 私達付き合ってないのにあんなことやこんなことはできないよ!!」

「……どんなこと?」

「わ…たしの口からは言えません!!」


ふふふ、と美人のお姉様が似合うように笑った王子にノックアウト寸前です!
王子はどうしてツボをついてくるのだ! 顔か!? 顔なのか!?


「じゃあ帰るね」

「あ、うん! えっと、また明日!」


眩しいように目を細めて口角を上げた王子は今まで見た中で一番綺麗だった。
今笑ったのかな?
問いかけたくなるほど幻みたいな笑みで、王子はいつか消えてしまうんじゃないかと思った。




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