飛べない天使の子
「沙久! あんた何考えていやがる!!」
「いやがる…って昔の口調出てるよ」
「アホ!! んなことどーでもいい!! あたしはなんで王子と登校してたんだって聞いてるんだ!!」
そんなこと一言も言っていませんでしたが……。
しかし、私だって桂子が理由もなしに昔の口調で、人を殺してしまいそうな剣幕で怒る人間だとは思っていない。
はっ! もしかして桂子は王子が好きなのか!?
「ごめん…知らなかったよ」
「は? トリップしねぇであたしの質問に答えやがれ!」
マジでキレていらっしゃる!
「え~王子とは昨日お友達になりました。今朝偶然お会いして登校してまいりました。桂子の気持ちも知らずに勝手にすいませんでした」
「…すっげぇ馬鹿なことしたって自覚してるか?」
「はい。桂子の想いび…」
「あたしはなよなよした奴は好かない。が、奴はモテる。…これが何を意味してるかわかるか?」
「好み外なのに好きになっちゃうなんて恋は偉大だな」
「馬鹿か!! あたしには怜生(れお)がいんだよ! 誰が王子に惚れるか!!」
「え?」
「え、じゃねぇよ。全く……」
怜生さんは桂子の年上彼氏さんです。
ん? なんで怜生さんが? あれ?
さっきまでの剣幕は消えて、穏やかに笑みをたたえる桂子に寒気がした。
怒っている時の桂子はまだいい。こうやって優しく微笑む桂子が一番怖いのだ。
でも、桂子の話は大したことなかった。