飛べない天使の子


「こいつ俺のだから王子には惚れないよ」

「な」


反論する前に口を押さえられる。
なに、この、あり得ないセリフ。
いつ私が至のものになったの! お金払われてないよ!

ふがふが手の中でもがいてみても、びくともしない。調子に乗って腕を脇の下に入れ、抱きすくめてくる。
まるで恋人同士みたいじゃないか!


「しばらく大人しくしてろ」


耳元で囁かれて、ぶわっと熱が広がっていく。
うわ、うわ、うわ、なに、恥ずかしいんだけど!


「沙久と王子は無関係。わかってくれた?」

「そっ…そんなの、口裏合わせているだけじゃ…」


空気で至が笑ったのがわかった。
親分子分が真っ赤になる。そうさせた至の変態っぷりに騙されちゃ駄目だよと忠告してあげたい。
でも、今その手中に落ちかけている自分を棚に上げることはできない。

なんで、至なんかにドキドキするんだ?


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