飛べない天使の子



私が怒っているのを見てみっちゃんは笑うの。
失礼しちゃう!


「あんな恥ずかしい呼び出しやめてよ! いい笑い者だよ!」

「どこが恥ずかしいの? 普通ですよー」

「そのみっちゃんの感覚が恥ずかしい!」

「うーわー傷つくー」

「…そんな風には聞こえないけど」


飄々というのとはちょっと違うんだけど、まあ馬鹿にされてる気もしなくもない。
いつもこんな感じだしね。真面目なところ見たことないや。


「香山くんとお付き合いをしてるそうじゃないですか」

「う、ん…? まぁ…」


うっかり嘘だけどねと言いかけた自分にゾッとした。
みっちゃんってほんと話しやすくて困る。相談クラブが繁盛する理由もわかるわ…。


「……本当なの?」

「え!? な、なんで?」

「なんとなく」


あからさまに動揺してしまい、疑いの眼差しを向けられる。
……ごめん至、みっちゃんの捨て犬+野良猫光線には勝てませんっ!

結局あらかた話してしまった。
ただ一つ、王子の体質は除いて……。


「そんなことだと思ったよ」

「絶対秘密にしてよ!」

「僕が話すわけないのさっちゃんが一番知ってるでしょ?」

「うん」


信用してなきゃこんな命を脅かされるような真実を言えるわけない。
思ったよりも秘密にしてるのしんどかったのかな、自分。


「で、さっちゃんは王子が好きなの?」

「う~ん…どうなんだろ。よくわかんないや」


好きって言われれば好きって答えるけど、相手の聞きたい意味はそんな簡単なことじゃないって最近わかった。
だから、ファンクラブの怒りを買ったわけだし…。


「香山くんは?」

「同じだよ」

「だよね~……可哀想に」

「ん? なんか付け足した?」


笑って首を振るみっちゃんを不思議に思いながらも、大分すっきりした心に満足を感じていた。
みっちゃんってすごいなぁって改めて認識!
ありがとうって言ったら目を丸くして何もしてないよって謙遜。
でも、何度もしつこく感謝したら折れてくれた。…あれ、おかしいなぁ。

今日は相談者がいないみたいで、恒例の“新発売お菓子講義”で盛り上がった。



< 31 / 40 >

この作品をシェア

pagetop