飛べない天使の子



う~ん、お腹いっぱい! 幸せ!
みっちゃんの持ってくるお菓子は本当に当たりばっかで、ついつい食べ過ぎちゃうんだよね。
うきうきしたまま下駄箱に行くと、久々の、ずっと会いたいと思っていた人が立っていた。
ちょうど帰るところみたいで、上履きを下駄箱に入れた。
私は周りに人がいないのを確認して、彼の名を呼ぶ。


「おーじ!!」


幽霊にでも呼ばれたように飛び上がって、王子はこっちを向いた。


「もも、ち、さん…?」

「嫌だなぁ。幽霊じゃないよ? 足ついてるし」


冗談で言ったのに、心からホッとしたため息が聞こえた。


「一緒に帰ろう!」

「え、でも…香山くんが…」

「いいんです。たまには浮気した方が」

「……」

「冗談だよ。ほら、最近会えなかったし。…ダメかな?」


私の上目遣いなんて効き目ないの知っているけど、試しにやってみた。
効果あったのかはわからないけど王子は隣を歩いてくれた。

話すの久々だなぁ。う、どうしよう…緊張してきた!


「百地さん?」

「…クレープ食べに行こう! 今日はやってるはずだから!」


一回意識したらぎこちなくなってしまい、バレないように早足で歩く。
同窓会で会った初恋の人みたいな気分だよ、おーじ!
どうしてくれよう!


< 32 / 40 >

この作品をシェア

pagetop