飛べない天使の子



そろそろ腹時計が鳴り始めたので、王子と文紀のところに戻ることにした。
お腹すいたねーとか話しながらパラソルを見ると全員集合している。


「沙久―! 何食べる?」


上機嫌の種樹が手を振って走り寄ってきた。
さては至にいっぱい遊んでもらったな。


「焼きそば!」

「じゃあ王子は一緒に買いに行くよー!」


と、王子の手を掴んで歩き出した。
パラソルの方でも疲れた顔をした至が桂子と文紀に立たされて種樹達の追いかけていった。
え、もしかして怜生さんと留守番? どんな組み合わせ?


「怜生さん、どうして置いていかれたんですか?」

「運転あるから」


なるほど! そう桂子に言いくるめられたんだなぁ…。
怜生さんの隣に腰を下ろして、話をした。
大抵は桂子の話で、しかも私が語るのを静かに相槌してくれた。
ここが真夏の海水浴場だと忘れるくらい穏やかな時間だ。
こんな風に落ち着ける人だから桂子好きになったんだろうなぁ。
少し羨ましく思いながら会話していると、騒がしく皆が帰ってきてお昼ご飯になった。


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