『契約』恋愛

風春が好き。
……――― でも、そんな感情を抱く資格なんてなくて。

もっと一緒にいたい。
……――― でも、残された未来は限りなく見えなくて。

それならいっそこんな関係、修復不可能なほどに壊れてしまえばいい。


「……短い間だったけど、そこそこ楽しかったよ。私につきあってくれてありがと。 …バイバイ“佐山君”。」


それだけ言って私は、風春の表情さえ見ずに彼に背を向けた。
その途端に流れ落ちた一筋の涙。歩を進めながら、そっと右手で拭う。その刹那、


「…待てよ。」


不意に発せられた一言と、急に温もりを感じる左手首。


「俺の話も聞いてくんない?」


振り向けば、風春の真剣な瞳が私をとらえていた。
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