『契約』恋愛
ぎゅっと目をつむり、気持ちを落ち着かせる。
動揺なんてするな、する意味もない。
まだ、風春は何も知らないのだから。
まだ、どうにでも言い繕えるのだから。
風春には嘘をつきたくないと思っていたけど、いつまでもそうは言ってられない。
《嘘も方便》とはよく言ったものだよね。
これ以上、風春に悟られないように。
これ以上、風春に追求されないように。
これ以上、風春に対しての気持ちを大きくしないように。
風春に聞こえない程度に小さく息を吐き、私は口を開く。
「…何も、隠してないよ。 私、隠すようなことないし。」
知らなくていいことだって
知らない方が幸せなことだって
この世にはいっぱいあるんだよ、風春…
たとえそれが、嘘で塗り固められた真実だったとしても。