『契約』恋愛
治まらない呼吸に、流れるのはさっきと違う汗。 震えだした指先に、頭の中で警鐘が鳴り響く。
「雪乃、いつも言っているけれど…
無理は、しないでちょうだいね。」
大丈夫、大丈夫…
このくらいなら、薬で治まる。
お母さんに心配かけちゃいけない。
「…わかってるよ。」
平静を装って答え、薬を飲むために立ち上がる。
歪む視界、ふらつく足下…
壁に手を突き支えながら、所定の場所にある薬に手を伸ばした。
そして、ふと、思う。
このまま死ねば、楽になれる。
いつ死ぬかわからない不安にかられて過ごすより、今、このまま。
どうせ風春ともう過ごせないのなら、風春に嫌われたまま死んだ方が、きっと楽だ。
私も、風春も。