『契約』恋愛
泣きやまない私をぎゅっと強く抱きしめ、風春は続けた。
「俺が雪乃の口から聞きたかった“真実”は、雪乃の本当の気持ちのことだよ。」
私の、本当の気持ち――…?
「もう、見栄も虚勢もいらねーから。ありのままの気持ちを、聞かせてくれ。」
隠してきたこと全部バレているのに、
私が今まで積み重ねてきたものも壊れてしまったのに、
今更、見栄も虚勢もないでしょう?
あえて聞かなくても、私の気持ちにくらい気付いてるはずなのに、今、この場で、私にこんな問いを投げかけるなんて、風春はズルい。
風春は、わかってるんでしょ?
私がすぐに答えることができないってことを…
その通り、こんなにも気持ちは決まっているのに、私はなかなか言葉を紡ぎ出すことができない。
だって私はやっぱり、“見えない未来”に風春までもを巻き込むのが、“死”への覚悟が揺らぐのが、恐かったから。