『契約』恋愛
嘘なんてつきたくないと思っても、現実はそう甘くない。そして現実は、嘘よりも残酷だ。
「…風春の気持ち、すごく嬉しかった。だから、それだけで十分だよ。」
静かに、ゆっくりと紡ぐ言葉。
そして、そっと風春の背中に自分の手を添えた。
「知ってると思うけど、私はもう長くない。いつ死ぬかわからないんだよ。見えない未来に風春まで巻き込んで、風春の時間を無駄にしたくないの。」
話し終えたと同時に、静けさに包まれる病室。自分自身が発した言葉を思いだし、また目頭が熱くなる。突きつけた現実に、自分が怖じ気ついてどうすんのよ…
こみ上げる涙をごまかすように、ぐすっと鼻をすすった。
「…………バーカ。」
不意に、耳元でかすかに聞こえた声。
ってか、この状況このタイミングで、バカって何?
こっちはいたって真面目に話してんのに、全く意味がわからない。