『契約』恋愛
「どうしたの?」
不思議そうに首を傾げる雪乃に、俺は言葉を紡ぐ。俺たちの間を、涼しげな秋の風が通り抜けた。
「…何で?何で雪乃が…」
「何で?って何?外出許可出たからに決まってるでしょ。それとも何?私がいたら何かおかしい?」
俺の問いを遮るように、淡々とそう答える雪乃。その様子が急いてるようで、余計に疑問が膨らんだのはきっと気のせいではない。
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、雪乃は最後に苦笑いを漏らすと、もっと喜んでくれると思ったのに。と、小さくつぶやいた。
「いや、あの医者が外出許可するなんて思えなかったから…」
そう、それが一番の疑問なんだ。
久しぶりに見る私服姿、それさえも弱々しく見えてしまうような状況の雪乃を、あの医者が簡単に外出させる訳ないから。
喜んでないわけじゃない。
ただ急に、不安が押し寄せてきただけ…