『契約』恋愛
「はい、どうぞ。」
差し出された二つのリング。
初々しくそれぞれ手に取ると、店員に促されるまま自らの指につけてみる。
「このリングは、他のものに比べてデザインにこだわっております。」
銀色に光るリング、不思議な色の光を放つムーンストーン…
見ていると何故か、わき上がってきた切ない気持ち。
「加えてムーンストーンは、表記がある通り、愛の道しるべの意味を持つ石なんですよ。」
リングをゆっくりはずして雪乃を見れば、何とも言えない表情を浮かべてリングを…いや、ムーンストーンを眺めていて。
雪乃が今、何を思っているのか、何を考えているのか、なんてわからないけど。
不意にこのリングを、ムーンストーンを信じたいと思った。
雪乃が“見えない”と嘆く未来を、明るく導いてほしいと思ったから――…