『契約』恋愛
「雪乃、ちょっと外で待ってて。」
店員にとりあえずリングを返し、二つ、再び並べられたそれを見て小さく雪乃にそうつぶやいた。
訝しげに俺を見上げる雪乃。渋々うなずき、店を後にする。
雪乃の姿が完全に中から見えなくなったのを確認し、さっきの店員に声をかけた。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ。…あの。やっぱりさっきのペアリング、買います。」
「ありがとうございます。
…ラッピングはいかがしますか?」
「いえ、すぐに渡すので、簡単で構いません。」
これで、何かが変わるかなんてわからない。石言葉を信じるなんて、昔の俺だったらあり得ないことだったろうし。
「またのご来店、お待ちしております。」
店員のマニュアル通りの言葉を背に、雪乃の待つ外へ足を向けた。