『契約』恋愛

「はぁっ…、はぁっ…」


跪き、繰り返される荒く短い呼吸…。


「おいっ!雪乃っ!?」


握られたままの手に、ぎゅっと力が込められた。爪が刺さる痛さなんて、これっぽっちも感じられなくて。

視線を合わせるべく屈めば、目に映る苦しそうな表情が、俺までを苦しくさせた。


「はぁっ…」


周囲の好奇な目線…
誰一人として救いの手を差し伸べてくれない中、混乱する頭を整理して手に取った携帯。

とりあえず、救急車呼ばないと…
そう思い、ふるえる手で番号を押す俺を、未だ苦しそうな呼吸を続ける雪乃が止める。


「だ、め…。風春、や、めて。
呼ば…ないで。」


俺よりもふるえている手で、ぎゅっと、力強く、番号を押す俺の手を握りしめる。
< 263 / 286 >

この作品をシェア

pagetop