『契約』恋愛
ベッドに雪乃を寝かせ、そっと頬に触れる。もう乾ききってしまった涙の跡に、ズキリと胸が痛んだ。
「かざ、はる…」
突然呼ばれた名前に驚き、勢いよく手を離す。それが寝言だと知り胸をなで下ろしたとき、きらめくものがまた頬を伝う。
「涙…。何で、泣いてんだよ…」
せめて夢の中でくらい、泣かないで、笑って…幸せに過ごしていてほしい、なんて思うのは、愚かなことなのだろうか。
雪乃を闇から救い出すことは、不可能なことなのだろうか。
俺がしてきた選択は、これで正しかったのだろうか。
途絶えることのない問いの中、俺の指元で、小さなムーンストーンが何かを予知するかのようにきらめく。
どうかそれが、悪いものではありませんように―――……
それだけを切に、心から願った。