『契約』恋愛
「…お?雪乃起きた?」
頭上から聞こえた愛しい声に、ゆっくりと体を起こす。幾分良くなったとはいえ、健全だとは嘘でも言えない体調を隠すように、私は笑った。
「あはは。起きたよ。ごめんね、迷惑かけて。」
「いや、別に。だから、謝んなっつったろ。」
トレーに乗せた料理を食卓に置きながら、風春も笑う。その笑顔を見ていられなくて、思わず落としてしまった視線。
「そうだったね。」
そうつぶやき、ぎゅっと両拳を握りしめる。くしゃっと、握りしめたシーツにシワが寄った。
…――今日は、今日だけは、泣いてはいけない。
そう心に誓い、今日を迎えたはずだったのにな。
自分のふがいなさに、情けなさがこみ上げた。