『契約』恋愛
「……まずかった?」
食べ始め、しばらくして箸を置いた私に、風春は様子をうかがうように問いかけてくる。
「いいえ。意外にも素晴らしくおいしかったです。」
「意外とか失礼なやつ…。
っつーか、もう食わないの?」
「うん。ごめんね。
あんまり食べれなくて。」
病院食でさえ、あまり食べれなかった私が、少し考えてあるにしろ、普通の食事を満足に食べれるわけもない。
確かに美味しかったし、風春の気持ちに対し、悪い気もするけれど…
「あー…、別にいいって。気にすんな。残った分は明日食うし。な?」
顔にまで、申し訳ない感じが浮かんでしまったのだろう。笑いながら、そうフォローしてくれる風春。
“ごめんね”…
口を開いたらこの言葉しか出てこなくて、出しかけた言葉を飲み込んだ。