『契約』恋愛
「さよなら。最期まで、ありがとう。」
熱くなった目頭、ついに崩壊した涙腺。
次から次へと、涙があふれ出る。
“さよなら”
自分でそう言ったくせに、これは、なんて重たい言葉なんだろう。
“またね”とは違う、どこか悲しいニュアンスが含まれた言葉。それを直に感じたのは、今この瞬間が初めてかもしれない。
溢れる涙を拭うことなく、静かに風春の家を出た。そして、あらかじめ約束し、迎えに来てくれていた車に乗り込む。
「もう、いいの?」
「うん。もう、いいよ。」
もう、大丈夫。私は後悔しない。
遠ざかる風春の家を見て少し、ほんの少しだけ胸は痛んだけど。
欲を言えば、もっともっと風春と一緒にいたかったけど。
これが今の私の最大限。
あとは風春が幸せになってくれさえすれば、私は後悔なんてしない。
だから。
さようなら、風春―――…