『契約』恋愛

雪乃が死んだのは、それから2日と経たない頃だった。

容態は急変、でも。
安らかに、笑顔で、逝ったらしい。

らしいというのも、最後の最後は見届けることができなかったから。
否、雪乃が俺に見届けられるのを、望んではいなかったから。

俺の部屋の窓辺に置いてある2つのリングが、光に反射してまばゆい光を放つ。

その向こうには、透き通るほど青々とした空が、見渡す限りに広がっている。

そういえば、雪乃の墓は、こんな空がよく見渡せる、高台の方にあるんだったな…

俺に空の青さを気づかせてくれたのも雪乃だったと思い出し、ふと、自嘲的な笑みが零れた。

開け放っていた窓から、涼しげな春の風が優しく吹き込んでくる。
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