『契約』恋愛
「……乃?雪乃っ!」
「あ、呼んでた?」
過去に思いを馳せていた私は、凛の大きな声で我に返った。静かな風が、私たちの間を通り抜ける。
「呼んでた?じゃないわよ。…寒くなってきたし、そろそろ教室戻ろう?」
呆れたような表情を浮かべながらそう提案する凛。私はそんな彼女に一つ笑みをこぼすと、小さくうなずく。そして、
「そうだね。戻ろっか。」
寒そうに体を震わせる凛とともに屋上を出た。戻り際不意に振り返れば、その後ろに広がっていたのは先程と変わらぬ青い空で……。
どこまでも続く青い空に、私は叶うことない願いを馳せた。