『契約』恋愛

他人にずっと嘘をついて、騙し続けて…
これからも最期まで本当のことを言えないような、そんな最低な奴なのに…。

そんなことが頭をよぎり、笑っていたはずの自分の表情が、一瞬でも曇ってしまったのがわかった。
だって佐山君が、私から空へとゆっくりと視線をはずしたから。

少し気まずい雰囲気の中、涼しい風が屋上を吹き抜ける。広がる静寂、私はそっと目を閉じた。


「……雪乃さ、」

「ん?」


静寂を破るように、不意に言葉を放つ佐山君。目を開くと、彼は未だに空に視線を向けていて。
私はその声に耳を傾けた。
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