僕と幽霊タムラ
「今日はとうさん仕事に行くの早いんだね。」


テレビを観ながら、特にどうでもいいと思いながら、なんとなく聞いた。


「今日は遠くの現場で、時間に間に合うように早く出て行かないといけないらしいわよ。」


キッチンから声だけが聞こえた。


おやじ、、。嫌いでは無いけれどなんとも好きにはなれない存在。


将来あぁなると思うとゾッともする。


自分の子供が自分と同じ歳になって今と同じ感情を抱いているとしたら嫌だなとも思う。


父親は自営業で時間や休日も不定休で前より仕事も減り大変そうだ。


自分が大人になったときにはこの国はどうなっているのだろう。


だいたい、今の自分が働くという姿さえ想像できない。


毎日、朝早く、大体、同じ時間に家を出て帰りは夜遅く帰って来る。


考えるとなんか虚しい感情が湧いてくる、、。


「シュウト早く食べなさい、学校に間に合わないわよ!」


「やべっ!」


時間は思ったより過ぎていた。


シュウトは朝食を食べ終わると、また洗面所へ向かい歯を磨き、鏡で髪をセットをした。


「シュウトなにやってんの!?そんな髪セットする時間ないわよ!」


母親は声張り上げながら言った。


「わかってるよ、行ってきます!」


シュウトは玄関へ行き、急いでローファーを履いて学校へと向かった。


また、昨日と同じ道、同じ時間に歩き始める。


夜とは違い、住宅街ということもあり奥様方がゴミを出したり、おじさんが犬を連れて散歩をしていた。


「俺も犬ならなぁー、、。」


と犬になったらの自分を考えてみた。


決まった時間にご飯を食べて、散歩をし、好きな時間に寝る。


毎日寝ていても、誰も文句など言わない、何か一芸をすれば誰もが喜んでくれる。




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