My darlin' Scientist〜私の彼氏は変わり者〜
早百合は強ばった表情を崩さない。震えているわけでもない。
ひどく、疲れているようだった。
「なんで、本社の…倉庫まで来れたのですか?」
最初に口を開いたのは、早百合。
「…紫に、怪しい動きはチェックしててもらっていたからね」
この一言が、早百合の何かに火をつけたようだった。
「だったら!私がこんな目に遭うってわかってたんなら、なぜわざわざ秘書にしたんですか!?」
早百合の怒りもごもっともだ。
――それでも、俺は早百合を近くに置きたかったんだ。
そばにいたかったんだ。
守りたかったんだ。
「ごめんね。早百合ちゃん…」
俺の気持ちを打ち明けても、今の早百合には届かない。
でも…
「早百合ちゃんが俺のことどう思っててもかまわない。それでも、俺は早百合ちゃんを守るから!だから…」
そばに、いてよ。
いつの間にか早百合の手を握っていた。
あたたかかった。
早百合が、かすかな声でつぶやく。
「だったら、しっかりお願いします」