My darlin' Scientist〜私の彼氏は変わり者〜



「痛…」

派手にぶつかってしまったらしく、相手は尻餅をついて怪我をしたのであろう右の手のひらを見つめている。

真っピンクのTシャツにダメージジーンズをはいた男性。
私より少し年上だろうか。

「す、すみません!」

こちらの声など聞こえていないのか、先ほどの姿勢を崩さない。

私はめげずに声をかけた。

「怪我されてますよね?…あの、これ」

早く帰りたかった私は、バッグからハンカチと名刺を取り出し無理矢理渡す。

「何かあったらこちらに連絡ください」

それでも微動だにしない男性を見て、私はそそくさとその場をあとにした。



――これが私の日常を変えていくことになるなど、今の私には知る由もない。



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