My darlin' Scientist〜私の彼氏は変わり者〜
その話を聞いてからしばらく経ったある日、会議のため本社にいた俺は、偶然第一営業部の前を通りがかった。
フロアの中をちらりと見たのと同時に、誰かが前も見ずに飛び出してきた。
俺がとっさに避けなかったら、大クラッシュ確実だっただろう。
『―――ちょっ、と……?』
注意するよりも早く走り去っていったその子が妙に気になって、俺はこっそりあとを追いかけることにした。
すると、彼女が女子更衣室に入っていったのが見えた。
中からは、泣きじゃくる声が聞こえてきた。
『大丈夫か?』
ノックしたあと、そう声をかけた。
しかし返事はなく、中からは相変わらず鼻をすする音だけが聞こえる。
ついてきてしまった罪悪感だろうか。
その場を離れることもできず、俺は扉の横の壁にもたれかかってしばらく様子をうかがってみた。