My darlin' Scientist〜私の彼氏は変わり者〜
【Fall in love】
―――長澤は、私を徹底的に無視し続けた。
周りも、長澤に同調して私の存在を無視し続けた。
針のむしろのような状況で会社を辞めずにここまでこれたのは、あのときぶっきらぼうに励ましてくれた言葉があったから。
……それが桂木所長だったなんて―――
気がついたら、私は彼に抱きついていた。
彼は、うろたえながらも私の背中に腕を回す。
「早百合ちゃん…!」
「あのとき、あの人の顔きちんと見てなくて…。名前もわからないし、もう二度と会えないんだろうなって思ってました」
私は、初めて会ったときのように鼻をすすりながら続ける。
「それが桂木所長で、すごく嬉しい」
私が言い終わると、抱きしめられている腕に力が入る。
少しの静寂のあと、口を開いたのは彼だった。
「これからも俺に守らせてよ。…もちろん彼氏として」
これ以上嬉しい言葉があるだろうか。
私も、桂木所長が好きです。
そう言うと、彼は優しく微笑んだ。