My darlin' Scientist〜私の彼氏は変わり者〜
桂木所長は再び私の唇を奪おうと顔を近づけてきた。
…が、寸前で止まる。
「早百合、って呼んでいい?」
私の異動に関しては有無を言わさなかったのに、こんなこと聞いてくるの?
そう思うと、なんだかおかしかった。
「…どうぞ?」
「ではさっそく。早百合………ちゃん」
―――ん?
いつの間にか桂木所長は私から顔を離して、耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
さっき長澤に跳び蹴りを食らわせた人と同一人物だとはとても思えなかった。
「あ〜もうっ!格好悪…」
頭をがしがし掻いて、なにかに気づいたように体をびくつかせたと思ったら私に抱きついてきた。
「顔赤いだろうから、見ないで…」
その仕草が子供のようで可愛らしかったので、私の胸に顔を埋める彼の髪を撫でた。
「―――所長!桂木所長!サンプルの様子が変わったんで早く見てください!」
ノックもせず研究員が飛び込んできた。
次の瞬間、桂木所長の表情が鬼のようになったのを私も不運な研究員も見逃さなかった。
「今行くから待ってろ!」
あぁ。デジャブ…