My darlin' Scientist〜私の彼氏は変わり者〜
「…いいとこでしたね」
帰りの車の中で、私は今日の感想を述べた。
あのあと店をあとにして、夕食を食べて現在に至る。
「でしょ♪また行こうね」
桂木所長も楽しかったようだ。
鼻歌なんて歌いながらハンドルを握っている。
楽しかった一日が終わり、次の信号を曲がればもう私の家に着いてしまう。
―――もっと一緒にいたい。
その一言が言いたくて、でもあと一歩が踏み出せない。
もたもたしていたせいで、最後の信号を曲がってしまった。
「早百合ちゃん。俺、のど乾いたな」
私の心は見透かされているのだろうか。
それとも、同じことを考えていたのだろうか。
「紅茶でよければお出ししますよ?」
あえて彼の方を見ないで答えた。
暗いから見えないはずだけど、今、私の顔は真っ赤なんだから。
私のアパートの前に車を止め、そっぽを向いている私の顔を引き寄せ、口づけをする。
目を閉じる余裕もないまま、吐息が絡まる。
わざと音を立てて唇を離し、余裕の表情を浮かべる彼を見て、負けたと思った。