My darlin' Scientist〜私の彼氏は変わり者〜
「私は、親の愛情を知りません。今まで、愛情なんて必要ないとさえ感じていました。心を許せるのは、同じ施設で育った紫というやつだけです」
……私も知らなかった事実が語られた。
紫さんも両親がいないなんて、初耳だった。
「でも、この子に出会った。笑顔があったかくて、何があっても負けない子。俺の持っていないものを持っているこの子のそばにいたいと思って、ちょっと無茶はしました」
それだけ言って慎悟さんの話は途切れた。
彼の目は潤んでいて、今にも零れ落ちそうなほどだ。
「こんな俺に大切なお嬢さんを託したくないと思われるかもしれませんが、俺は、早百合を大切にします」
そう言って頭を下げる。
時間が止まってしまったようだった。
私は、歯を食いしばって我慢している彼の代わりに、静かに涙を落とした。
「……ごめんなさいね。こんなこと聞いたりして…でも、なんだか安心したわ。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
婚約は、母の方からお断りを入れるとのことだった。