ケイカ -桂花-
宮崎の息がかかりそうなくらい近づくと、私の目は自然に閉じた。

全然経験無いのに、こういう時って勝手に動いてくれちゃうもんなんだ。

そう思ったところで、不思議だという感覚だけを残して、パタッと思考回路が停止した。


宮崎の唇が私の唇に重なった。


視界も脳も遮断した今、唇だけが私を支配する。

温度や、柔らかさ、その他全て、宮崎の全てを私の唇で受けている気がした。

ぐちゃぐちゃに絡まったネックレスのチェーンがするっと解けたみたいな、ガチガチに固まった何かがとろりと溶けたみたいな、開放感。

そして心地良い感触。

数秒後、唇が離れていくのと同じ速度で光が差し込んできた。

開ける時も勝手に動いてくれちゃうんだ、目って。

それが私の初めてのキスの初めての感想だった。
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