ケイカ -桂花-
「昨日さ・・・」

シャリッ、髪を切る音の間に小さな声でケイが言った。

「昨日、変な事言ってごめんね。余計な事だった」

そんな風に謝られたら、私なんて言ってあげればいい?

鏡越しのケイの顔は下を向いて、手も止まっていた。

「ハナがさ・・・、友達なんて言うから浮かれちゃった」

照れくさそうにクスッと笑って、再び手を動かし始めた。

「私のせいかよ」

その言葉は、多分私が探してた言葉じゃないけれど、いいんだ、今こうやって2人で笑っているから。




「よしっ、完成」

カットだけで1時間以上かかった。

鏡の中の私は、10センチくらい短くなって、肩の少し上で毛先が踊っている。

「なんか、いいかも」

思わずつぶやいた。

「でしょー?ハナはこの長さが似合うのよ。初めて見た時にそう思ったの」

得意気に言った。

めっちゃ迷ってたくせに。

ま、気に入ったからいいけどね。
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