ケイカ -桂花-
階段を登る足は重かった。
全然出来なかったテストを受け取りに行く時の100倍くらい気が重い。
真実を知ったら後悔するかもしれない。
聞かなかったら、少なくとも楽しかった何日間の思い出だけはそのまま残る。
ときめきやふわふわした幸福感、手の温もりや通じ合った感覚。
初めて手にしたささやかな幸せ達が、行けば、崩れ落ちる。
だけど行かなきゃ。
どうしても確認しなきゃいけない事がある。
重い鉄のドアを両手で押し開ける。
正面に宮崎の後姿があった。
校舎の端からずいぶん手前に作られた鉄の柵に手を掛けて、遠くを眺めているみたいだ。
その方向の先にはS町がある、それは私の考えすぎかもしれないけど。
ドアの閉まる音に気付いた宮崎が体ごと振り返り、「桂」と言ってにこっと笑った。
どこまでも広がる青い空をバックに、笑顔の宮崎はとても爽やかで、さまになっていた。
やっぱかっこいいな、この期に及んでそんな風に思ってしまう。
「髪、切ったんだ?」
宮崎の問いに答えず柵に近づき、宮崎と向き合った。
全然出来なかったテストを受け取りに行く時の100倍くらい気が重い。
真実を知ったら後悔するかもしれない。
聞かなかったら、少なくとも楽しかった何日間の思い出だけはそのまま残る。
ときめきやふわふわした幸福感、手の温もりや通じ合った感覚。
初めて手にしたささやかな幸せ達が、行けば、崩れ落ちる。
だけど行かなきゃ。
どうしても確認しなきゃいけない事がある。
重い鉄のドアを両手で押し開ける。
正面に宮崎の後姿があった。
校舎の端からずいぶん手前に作られた鉄の柵に手を掛けて、遠くを眺めているみたいだ。
その方向の先にはS町がある、それは私の考えすぎかもしれないけど。
ドアの閉まる音に気付いた宮崎が体ごと振り返り、「桂」と言ってにこっと笑った。
どこまでも広がる青い空をバックに、笑顔の宮崎はとても爽やかで、さまになっていた。
やっぱかっこいいな、この期に及んでそんな風に思ってしまう。
「髪、切ったんだ?」
宮崎の問いに答えず柵に近づき、宮崎と向き合った。