ケイカ -桂花-
「おととい私ここに来たよ」

宮崎は顔色を変えることなく笑顔を残したままだった。

一瞬、全部がものすごい勘違いだったのかも、と思わせるほど普通だった。

「見た、よ」

「そう」

表情も、声も口調も、やっぱり普通だった。

Dとのキスをあっさりと認めた事で、私は次の言葉に詰まった。

目の前で涼しい顔をした宮崎が何かを言う気配はない。

まだどこかで否定の言葉や、私が納得するような言い訳を期待していた自分が笑える。

「つきあってるの?」

「ううん、つきあってないよ」

サラッと答えた。

「だって、キスしてたじゃん」

私よりずっと濃厚なキスを。

「つきあってないと、しちゃいけないなんて決まってない」

決まってはないけど・・・。

私が問い詰めてるはずなのに、宮崎の方が主導権を握ってる感じがする。

開き直りとは違う、全く悪気が無いみたいな。
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