ケイカ -桂花-
「両親共信者でさ、そこで結婚したってくらい熱狂的なね。だから俺が信者なのは生まれる前から決まってた」

「そんな・・・」

「もちろんインチキだって知ってるよ、その手口も、俺が入れた人達がどうなるのかも」

「親がそうだからって宮崎には関係無いよ。本当はそんな事したくないんでしょ?」

「言っただろ?生まれる前から決まってる事なんだ。教団の為に働く事が、信者を勧誘する事が俺の全てなんだ」

「そんなの違う。宮崎の気持ちは?自分の気持ちを大事にしなきゃ」

ここ最近自分に言い聞かせていた言葉が口をついた。

宮崎は急に怖いくらいの真剣な顔で断言した。

「俺の宿命、だから。変える事もそこから逃げる事も出来ない」

気持ちなんてとっくに諦めてる、そう言ってるみたいにも聞こえた。

本当にそうなのかな?

私達はもう15歳で、あと何ヶ月かで中学校を卒業する。

義務教育を終えるのだ。

卒業と同時に家を出て働き始める人だって沢山いる。

宮崎だってそうすれば・・・。

「すぐには無理でも、卒業したら家を出ればいい。少なくとも逃げる事は出来るよ」

親から離れれば全てが解決する、宮崎をインチキ宗教から解放出来る気がした。

未来に小さな光を見つけたつもりだった。
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