ケイカ -桂花-
「だけどさ、俺、間違えた」

宮崎は、悲しそうでもあり楽しそうでもあった。

あの日、教室で、初めて間近で見た目と同じだった。

全てを見透かせる瞳と、何も見えない瞳、混ざる事のない両方を含んでいた。

「結構自信持ってたんだけど、初めてしゃべった時に気付いた。あっ、違ったって。桂はそういうの必要の無い人だって」

「勧誘する気は無かった、って事?」

「うん。実際してないだろ?」

「そうだけど・・・」

確かにチラリともそんな話しなかった。

「違ったって分かったのに、なんで私とつきあったの?」

「さあ?」

宮崎は笑いながら言って、柵に両腕を置き、その上に顎をのせて遠くを眺めた。

インチキ宗教とか宿命とかそんなの関係無しに、私の事を・・・。

好きだったから?そう聞こうとして、はっとした。


私は宮崎に一度も「好き」と言われていない。
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