ケイカ -桂花-
しばらく横顔を眺めていた。

風が宮崎の前髪を揺らし、少し乱れた髪に手を当てた。

どう見ても普通の人、ごくごく普通の15歳の男の子にしか見えない。

だけどその人生は、宮崎の意思なんてまるで無視で、強制的に作られてきた。

15年もの長い時間を。



「宮崎って誰かに嘘ついた事、ある?」

「ないよ。そんなの後で面倒になるから」

そっか。

少しだけ分かった。

おそらくDにもマミにも好きとは言ってない、つきあってとも。

それは嘘になってしまうから。

だけど2人とも恋人同士、もしくはそれに近い状態だと思っている。

Dとはキスしてたし、マミは勝ち誇った顔だったのが証拠だ。

宮崎は嘘はつかずに、相手の希望通りにそう思わせる、それを意図的にしてるんだ。

私は「つきあって」とは言われた。

そこに当然好きが含まれていると思っていたけれど、そうじゃない。

つきあいたいからつきあってって言った、そういう事なんだ。

その気持ちが単に興味を持ったからなのか、好きだからなのかは分からない。

それは多分、宮崎自身も分かっていない気がする。


嘘を沢山重ねて相手をその気にさせるのと、
嘘は1つも無しで相手が勝手にその気になる様にさせるのとでは、どっちが罪が重いのだろう?
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