ケイカ -桂花-
執着
あ、・・・間違えた。

チャイムを押してから気付いた。

私はケイの店ではなく、部屋の方に来ていた。

もう店に行っている時間だ。

バッカだなー、ケイには内緒にしなきゃ、そう思ってビクッとした。

私って、部屋まで間違えた?

部屋番号を確かめて、もう一度ドアを見る。

なにこれ?

ドアの取っ手に大きな南京錠がかけられている。

はぁ?

これじゃあ、これじゃあ、まるで・・・。

誰も住んでいない、空き部屋みたいじゃん。

恐る恐る鍵に触ってみる。

冷たい。

それは幻なんかじゃなく、実体のある本当の鍵で、私をあざ笑うかの様に鈍く光った。
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