ケイカ -桂花-
夜中、だった。

オヤジが帰ってくるのを、部屋で耳を澄ませてひたすら待っていたら、夜中3時近くになって玄関で音がした。

そっと階段を降りる。

前にオヤジが「ケイの所に行ってるのか?」って聞いてきた事があった。

あの頃から、きっと何かを知っていたんだ。

お母さんは1時くらいまでは待っていて、寝たのを音で確認済みだ。


リビングでネクタイを緩めている後姿に声をかける。

「オヤジ」

「うわっ、・・まだ起きてたのか?あ、起こし・・」

「ケイはっ?」

「・・・いなくなった」

「どこに行ったの?お店は?部屋にだっていなかったし」

「・・・分からない」

「分からないって、つきあってるんだろ?好きなんだろ?愛しあってるんだろ?」

「とにかく落ち着けって。本当に分からないんだ。最近連絡とってなくって、今日いきなり電話で別れを告げられた」

「なんでだよっ。どこに行ったんだよ?」

「理由は言わなかった。お父さんも色々探したんだけど、結局見つからなかった」

オヤジの顔には疲れが滲んでいた。

こんな時間まで探してたんだろう。
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