ケイカ -桂花-
「どうするんだよ?これから」

軽く聞くつもりが思いのほか重く響いた。

「これから?んー、この為に仕事休んじゃったからなー、でも今から行ってみようかな?」

「バカ、違うよ。オヤジだよ。別れる?」

「ううん、別れないけど。なんで?」

「なんでって、普通バレたら終わりだろ?」

「そう?セイちゃんの事好きだもん」

そう言ってふわっと笑った顔からは、オヤジへの愛情があふれていた。

「ハナのママも別れろとは言わなかったし」

「だから作戦だろ?ママはこういうの慣れてるって言ったじゃん」

愛人の一重の目が真っ直ぐに私に向かっている。

「ふーん。子供かと思ったら、ハナ、案外大人じゃん」

おっ?マジ?さっきの取り返した?

「愛人に、この奥さんにはかなわないって思わせるための手なんだよ。そんな事も分かんないの?」

再び自慢気にしゃべった。
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