ケイカ -桂花-
バイトの事はなかなか言い出せず、すっかり空っぽになったカップを口に当てながら、テキパキと準備をするケイをボーっと見ていた。

カップからは花の様な甘い匂いが香っている。

そのがケイの匂いと同じだと気付いた頃、ケイが口を開いた。

「で、どうしたの?今日は」

「ああ・・」

言葉にならない声がカップに反響して大きく聞こえた。

「なーに?私に会いに来たの?」

茶化してケイが笑った。

カップをテーブルに置き、密かに息を吸う。

「バイト、したい、って思って」

カタコトみたいな言い方になったけど、素直に言えた。

「あ、今月お小遣いピンチだしっ」

すぐに恥ずかしくなって、急いで付け加えた。

この前封筒に入っていたのは1万円だった。

時給にすれば2000円近い。

こんなに割りのいいバイトは無いから、私の言ってる事に筋は通っているはずだ。
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